JP−A−A35  中級編  旧約聖書概論 Aグループ  (35) ダニエルの預言と世界情勢
19/04/281/2  ● ■・■

■ ダニエル書には当時から数百年後に関する世界情勢について的確な預言をしておりましたが、預言の中でもっとも重要なものはキリストの初臨(誕生と十字架)と終末(キリストの再臨)に関する預言です。
A
ダニエル書9章にはエルサレムの神殿の再建命令が出てから数百年の後、キリスト(油注がれたもの)が来られること、罪のあがないがなされ、動物のいけにえが廃止されることについて書かれています。
B
(9章24節〜25節)9:24 あなたの民とあなたの聖なる都については、七十週が定められている。それは、そむきをやめさせ、罪を終わらせ、咎を贖い、永遠の義をもたらし、幻と預言とを確証し、至聖所に油をそそぐためである。 9:25 それゆえ、知れ。悟れ。引き揚げてエルサレムを再建せよ、との命令が出てから、油そそがれた者、君主の来るまでが七週。また六十二週の間、その苦しみの時代に再び広場とほりが建て直される。(中略)9:27・・・半週の間、いけにえとささげ物をやめさせる。・・・
C
預言解釈をする上で重要なパターンは1日は1年を表しているということです。
したがってここに書かれた「七週また六十二週」は合計69週であり、483日、すなわち483年を意味します。
D
「エルサレムを再建せよ」という命令の中で最終的な命令は457年だと言われています。もしそうなら、実際にキリストが公生涯(ミニストリー)に入った西暦27年とはその命令の483年後なのです。
(注:西暦はキリストの誕生を元にして定められましたが計算違いのために、キリストの誕生はBC4年です。)
E
■キリストの十字架
西暦27年に公生涯に入ったイエス様の活動期間は3年半でした。これは7年の半分であり、9章27節に書かれた、まさに「週の半ば」(新改訳では「半週の間」)という言葉の成就なのです。
F
■イエス様がなさったこと
9章24節は、ここに出てくるキーワードを見るなら「罪を終らせ」「咎をあがない」「永遠の義をもたらし」・・、まさに救い主の出現を予告するのにふさわしい預言です。また、十字架にかかられた後、9章27節にあるように「神殿でのいけにえとささげもの」が廃止されたのです。
(残りの3年半については諸説があるので解説を省略いたします。)
G
■ 再臨(キリストが再び地上に戻ってこられること)の預言
7:13 私がまた夜の幻を見ていると、見よ、人の子のような方が天の雲に乗って来られ、年を経た方のもとに進み、その前に導かれた。7:14 この方に、主権と光栄と国が与えられ諸民、諸国、諸国語の者たちがことごとく、彼に仕えることになった。その主権は永遠の主権で、過ぎ去ることがなく、その国は滅びることがない。
H
イエス様が、(マタイ24:30)と(マタイ26:64)でこの御言葉を引用し「人の子が・・天の雲に乗って来る」と自分の事を説明するのに引用した時に、大祭司は衣を裂いて「神への冒涜である」と言いました。それがダニエル書の引用であることは明らかで「雲に乗ってやってくる」とは来臨のメシアを意味する言葉だったからです。
I
■ 世界情勢についての預言
先の学びで紹介した2:32〜33の「頭は純金、胸と両腕とは銀、腹とももとは青銅、すねは鉄、足は一部が鉄、一部が粘土」の像の解き明かしは7章に登場する「獅子、熊、ひょう、鉄のきばを持つ第4の獣」とも対応しています。7章ではそれらがバビロン、メデイアペルシャ、ギリシャなどの各帝国であることについて具体的に解説しています。(これらの預言は非常に大きな意味がありました。その時代はまだギリシャがそれほど力をつけていなかったので、ギリシャが世界を治める事態は誰も想像できなかったことでした。)
J
ダニエル書の優れた点は実際の歴史的事実と照らし合わせてその的確さを確かめれることです。
しかもわかりにくい預言解釈ではなく名指しで書かれていることも多いです。
K
ギリシャが大帝国を築いたのはアレクサンドロスの大遠征によるものですが、彼が4万の軍隊で60万のメデイアペルシャ軍と対決するといった無謀なことをしました。しかし、奇跡的にペルシャ軍を打ち破ることができました。彼は自分では気がついていなかったのですが、神によって動かされていたのでしょう。
L
事実、彼が勝利を得て勝ち進むことについては、夢の中で神のお告げを受けておりました。
その夢とは、ある白い亜麻布の衣を着た人が「ペルシャ征服を成功させるのは私だ。」と語ったことです。
実はアレクサンドロスの大遠征の途上で、ユダヤ州(当時ペルシャ帝国の一州)は彼の怒りを買ってしまった為に滅ぼされるところでした。しかし、彼に会いに出てきたエルサレムの大祭司の衣装が夢で見た人と同一だったことによりアレクサンドロスはユダヤ州を保護する側に回りました。
その心変わりの様は、その大祭司の前でひれ伏し「イスラエルの神を礼拝する」というほどだったそうです。
M
その後、アレクサンドロスが手渡されたダニエル書を読んだ時にその内容があまりにも的確だったこともあり、感銘をうけ、また、8章、11章にギリシャがメデイアペルシャを打ち破ることが預言されているのを見てさらに励まされました。しかし、彼が賢明でなかった事は(8:22)と(11:4)の言葉を見落としていたことです。
N
8:21 毛深い雄やぎはギリシヤの王であって、その目と目の間にある大きな角は、その第一の王である。 8:22 その角が折れて代わりに四本の角が生えたが、それは、その国から四つの国が起こることである。しかし第一の王のような勢力はない。
O
11:2「全世界を、とりわけギリシアの国を奮い立たせる。(2017年版が正しい訳)」11:3 ひとりの勇敢な王が起こり、大きな権力をもって治め、思いのままにふるまう。 11:4 しかし、彼が起こったとき、その国は破れ、天の四方に向けて分割される。それは彼の子孫のものにはならず、(中略)その子孫以外のものとなる。
P
ダニエルは帝国が4つに分裂してしまう預言をしましたが、実際にそれが起こりました。
この出来事を誘発したのはアレクサンドロスのおろかな発言にもありました。というのも、彼の下に4人の有力な将軍がいたのですが、彼は死のまぎわに「私の後を次ぐのは最も強い者だ。」と語ったのです。
それゆえ4人の将軍は為に互いに敵対することによってギリシャは弱体化してしまいました。
Q
主は境界線を定めており、人に自由が与えられていますが、それを超えそうになるなら、主が介入されます。
アレクサンドロスのおろかな発言は、ギリシャがその与えられた範囲内を超えないようにするために、言わされてしまったのだと思います。(ヨブ38:11) に書かれた「ここまでは来てもよいが越えてはならない。高ぶる波をここでとどめよ」と命じた。」とあるようなものです。
R
ダニエルが解き明かした像の幻で鉄の腿はローマ帝国を表しています。その字のごとく鉄のように強力な帝国でしたが、後に帝国は西と東に分かれてしまいました。体に腿が2本あるようにそうなってしまったのです。
S
■ 終末の預言
ダニエル書はまた、世の終わりの出来事についても記しております。(12:11)に1290日の患難について書かれていますが、それは黙示録13:5に書かれた42ヶ月の獣の活動時間とも一致しています。
(21)
それらを総合すると、@第2テサロニケ2:3「不法の者、滅びの子」が現れます。それは「反キリスト」であり、 マタイ24:15にも引用された「荒らす忌まわしいもの」であり(ダニエル9:27) 「彼は一週の間、多くの者と堅い契約を結び、半週の間、いけにえとささげ物とをやめさせる。荒らす忌むべき者が翼に現われる。ついに、定められた絶滅が、荒らす者の上にふりかかる。」の引用です。
(22)
世の終わりには患難期があったりと、波乱に満ちたものになりそうですが、ダニエル書が12:12 で「幸いなことよ。忍んで待ち、千三百三十五日に達する者は。 12:13 あなたは終わりまで歩み、休みに入れ。あなたは時の終わりに、あなたの割り当ての地に立つ。」という言葉で終わることは、私達に対する励ましです。
(23)
黙示録3:10 あなたが、わたしの忍耐について言ったことばを守ったから、わたしも、地上に住む者たちを試みるために、全世界に来ようとしている試練の時には、あなたを守ろう。3:11 わたしは、すぐに来る。あなたの冠をだれにも奪われないように、あなたの持っているものをしっかりと持っていなさい。
(24)
私達はどこに向かっているのかわからない者ではないのですから、しっかりと立って行きましょう。